令和二年度 第二回研究例会

1.日 時 令和3年3月13日(土)13時20分〜17時00分

2.会 場 オンライン会議(ZOOM利用)を基本とします。
        *zoomの利用が難しい方は、以下の会場にお集まりください。
        東京都立西高等学校 東京都杉並区宮前4-21-32 1年G組

3.内 容
  13:20〜14:40 録画による公開授業及び研究協議
「新科目「公共」を意識した授業「政治・経済」の最終回」
   千葉県立東葛飾中学校・高等学校 教諭 内久根 直樹 先生
  *レジュメはこちら

  14:45〜15:15 教育実践報告会
      「ミネルヴァのふくろうが飛び立つ前に〜オンライン哲学カフェの実践を通して〜」
          中央大学附属中学・高等学校 川北 慧 先生
      「コロナに関わる誹謗・中傷問題について」
          東京都立雪谷高等学校 教諭 百瀬 雅治 先生

  15:20〜16:50 学術講演「普遍的連帯への歩みはどうして生じないのか」
          社会学者 大澤 真幸 先生

  16:50〜17:00 事務連絡・閉会

■録画による公開授業要旨■(内久根先生より)
第3学年の必修科目「政治・経済」(320名)の授業の最終回。政治や経済に関することは「わからないなら語るな」と言われることがある。果たして、語ることができないことには沈黙をしなくてはいけないのだろうか。否。そうではなく、関心をもつ機会を与え、わかろうとするモチベーションを高めさせ、世界の理解のための言葉を提供することこそが授業実施者には求められているのではないだろうか。生徒を政治や経済から撤退(withdraw)させるのではなく、生徒に未来をともに描く(draw with)存在になってもらうことを意図に授業を構築することは「公共」にもつながるだろう。未来を語る最終回から、これからの授業について参加者とともに描きたい。

■学術講演講師プロフィール■(大澤先生)
社会学者。1958年、長野県松本市生まれ。東京大学大学院社会学研究科卒。社会学博士。千葉大学助教授、京都大学大学院教授等を歴任。著書に、『ナショナリズムの由来』(毎日出版文化賞)、『自由という牢獄』(河合隼雄学芸賞)、『〈世界史〉の哲学』等。個人思想誌『Thinking「O」』主宰。

■学術講演要旨■(大澤先生より)
コロナ禍は世界中の人々に、国民や国家の境界線をこえた普遍的な連帯、人類レベルの連帯が必要だということを教えた。誰もが、人類が生き延び、今後も繁栄し続けるには、やがては国民国家を超えた世界共和国のようなものが建設しなくてはならない、ということを理解した。にもかかわらず、実際に、現在起きていることは、こうした理解とは真逆のことである。国民国家のエゴイズムの強化や階級的な格差の拡大。どうして、誰もが理解していることとは正反対のことが起きてしまうのか。その根本的な原因はどこにあるのかを考える。


令和二年度 冬季研究協議会

1.日 時 令和2年12月26日(土)13:00〜16:55(12:45受付開始)

2.会 場 東京都立大学秋葉原サテライトキャンパス
       東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル12階1202室

3.内 容
  13:00〜14:20 読書会:『超読解!はじめてのヘーゲル「精神現象学」』(竹田青嗣+西研:講談社現代新書)
        レポーター:東京都立小平南高等学校 指導教諭 岡田 信昭 先生

  14:30〜15:20 新科目「公共」の「公共の扉」の指導事例の研究会
      事例? 「宗教と食文化をめぐって」 東京都立稔ヶ丘高等学校 主任教諭 照井 恒衛 先生
       事例? 「青年期の課題」 東京都立杉並高等学校 主任教諭 伊藤 昌彦 先生

  15:30〜16:45 新学習指導要領についての講演
          文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官
          国立教育政策研究所教育課程研究センター
                 研究開発部 教育課程調査官 飯塚 秀彦 先生

  16:45〜16:55 事務連絡・閉会

■読書会要旨■(指導教諭 岡田 信昭 先生)
 原書全訳は膨大かつ難解なので、分かりやすい抄訳を使います。全訳は時間の都合上使いませんが、関心のある方は、全訳の他に下記の文献を参考にしてください。
・全訳は,牧野訳(未知谷)は注が豊富で一押しですが高価。熊野氏の新訳(ちくま学芸文庫)が好評です。樫山訳(平凡社,河出)は逐語訳で難解。金子訳(岩波)は立派です。
・高知大学紀要 原崎道彦「ヘーゲル『精神現象学』饒舌訳の試み」2〜6。ダウンロードできる部分訳です。直訳は不可能と主張する氏の工夫された分かりやすい日本語です。決めていませんが、補足に4(知覚)と6(精神)をdlしてください。
・『ヘーゲル用語辞典』未来社 思想の体系をもとに,大項目を解説した読む事典です。
・ヘーゲル自身の出版広告文から
「『精神現象学』は学への準備を考察する哲学の第一の学となる。さまざまな精神の形態を旅路の宿駅として自らのうちに含み、この旅路を経ることによって、精神は純粋知あるいは絶対となる。考察されるのは、意識、自己意識、観察し行為する理性、人倫的、教養的、道徳的な精神としての精神そのもの、最後に様々な形式における宗教的な精神である。一見,混沌のごとくに現れる精神の諸現象の豊かさが一つの学的な秩序へともたらされ、この秩序によって精神の諸現象がそれらの必然性に従って叙述される。」

■講演講師プロフィール■(飯塚 秀彦 調査官)
 平成6年群馬県公立高等学校教員として採用。人事交流による3年間の中学校勤務などを経て、平成31年4月より国立教育政策研究所の高等学校公民科「倫理」及び中学校、高等学校の道徳教育を担当する教育課程調査官。文部科学省教科調査官を併任。

■講演要旨■(飯塚調査官より)
 新学習指導要領では、共通必履修科目「公共」を学習をした後に選択履修科目である「倫理」、「政治・経済」の学習を行うことになっています。したがって、「公共」と「倫理」の接続を踏まえた学習指導が強く求めらます。また、このことは、「公共」の学習全体を通して「倫理」に関わる内容を通底させることも求められることになります。一方、学習評価では、新たに三つの観点による学習評価を行い、指導要録に記録することになります。従前より「指導と評価の一体化」の重要性が指摘されていましたが、新学習指導要領ではより一層「指導と評価の一体化」を進める必要があります。学習指導要領の実施を控え、上述の内容についてお話しさせていただきます。


令和二年度 第一回研究例会

1.日 時 令和2年11月14日(土)13時20分〜17時00分

2.会 場 東京都立西高等学校 視聴覚ホール

3.内 容
 12:50〜 受付開始
 13:20〜14:40 記念講演 「思考力を伸ばす倫理の授業」
        東京大学教育学部附属中等教育学校 副校長 村野 光則 先生

 14:45〜15:15 教育実践報告会 「公民科で心理学をどう教えているか」
    「教育実習で心理学を取り上げて」江東区立第三砂町中学校 教諭 木下 芽 先生
    「認知心理学・性格・アイデンティティ」都立西高等学校 教諭 菅野 功治 先生
    「社会科・公民科の青年期と心理学」都立産業技術高等専門学校 教授 和田 倫明 先生

 15:20〜16:50 学術講演 「高校公民科への心理学の本格的導入に向けて」
         十文字学園女子大学 教授 池田 まさみ

 16:50〜17:00 事務連絡・閉会

■記念講演講師プロフィール■(村野先生)
筑波大学第一学群人文学類哲学専攻宗教学コース卒、同大学教育研究科社会科教育コース修了。新採で都立秋留台高校に着任。授業に障害者を招く取り組みが教育テレビ「あすの福祉」で放映される。その取り組みで読売教育賞受賞。同校に10年間勤務した後、都立立川ろう学校高等部に異動(3年間)。その後、お茶の水女子大学附属高校に14年(うち2年間は大学に出向し、その際に池田まさみ先生に出会う)、東京大学教育学部附属中等教育学校に9年勤務し現在に至る。都倫研では広報部長、事務局長を担当。東京都手話奉仕員。第二種電気工事士。

■記念講演要旨■(村野先生より)
スマホやPCの普及により、知識を自分の頭の中に覚えておく必要性は低下しています。その一方、現代の倫理的諸課題(生命倫理、環境倫理など)のように、多角的な観点から深く考える能力の必要性がこれまで以上に高まっています。学習指導要領でも、知識・理解に加え、(論理的な)思考力、判断力、表現力が重視されるようになりました。倫理はそうした能力を育むのに最も適した科目です。私たち倫理担当教員も、知識・理解中心の授業から、知識・理解を基に、思考力、判断力、表現力を伸ばす授業に重心を移していくべきだと考えています。今回は、公開研究会でのウィトゲンシュタインの授業(録画)をご覧いただいた上で、原典を活用しながら生徒の論理的思考力を伸ばしていく方法について、みなさんとともに考えていきたいと思います。

■学術講演講師プロフィール■(池田先生)
略歴:2001年お茶の水女子大学大学院人間文化研究科(博士課程)修了。お茶の水女子大学大学院助手、講師、同大学人間発達教育研究センター准教授を経て、2013年十文字学園女子大学教授(現職)。博士(学術)。研究分野:認知心理学・実験心理学・発達教育工学 著書:『知覚・認知心理学』(分担・放送大学出版会、2019)、『心理学の神話をめぐって』(編著・誠信書房、2017)、『視覚実験研究ガイドブック』(分担執筆・朝倉書店、2017)、『心理学事典』(分担・平凡社、2014)、『認知心理学演習 言語と思考』(編著・オーム社、2012)、『認知心理学演習 日常生活と認知行動』(編著・オーム社、2012)、『視覚系による3次元曲面上の対称構造の検出』(風間書房、2003)、他。

■学術講演要旨■(池田先生より)
生徒さんから「心理学とはどのような学問か」と尋ねられたら、私たちは何と答えるでしょうか。同じことを生徒さんに尋ねると、臨床心理やカウンセリングのことを思い浮かべる人が多いようです(間違いではありません)。心理学を学べば「人の心が読める!」と思っている人もいるようです(が、これは間違いです)。心理学は学問の実態と一般のイメージとが大きく乖離していることもあり、心理学関係の学会や心理学科をもつ大学では、心理学を正しく知ってもらうために「高校生のための心理学講座」をここ10年ほど毎年開催しています。その成果は徐々に窺えるようになってきました。  一方で、公民科という教科において高校生に心理学の何を伝えるかは、重要な課題です。心理学研究は基礎から応用まで多岐にわたっています。研究そのものを伝えるのか、研究で得られた理論や知見を伝えるのか。生徒の進路にも少なからず影響することを考えると、伝えるべき内容は慎重に検討される必要があるでしょう。本講演では、「高校生のための心理学講座」の内容を交えながら、現在「高校公民科への心理学の導入に向けて」大学側で検討されていることをご紹介します。


令和二年度 夏季研究協議会

1.日 時:令和2年8月15日(土)13:30〜16:40 (13:15受付開始)

2.会 場:オンライン会議(ZOOM利用)を基本とします。
    *zoomの利用が難しい方は、以下の会場にお集まりください。
         東京都立西高等学校

3.内 容
 13:30〜14:50 「倫理」「現代社会」のための読書会:植村玄輝他編『現代現象学』(新曜社)
      レポーター:東京都立白鴎高等学校・付属中学校 池田 仁 先生
        *レジュメはこちら
 15:00〜16:30 授業実践交流会〜学びを止めないオンライン教育の事例紹介〜
  (1)「青年期」(レポート、映像などの工夫) 東京都立町田高校 久世 哲也 先生
  (2)「日本国憲法」(授業支援ツールの活用) 神奈川県私立相洋中学校・高等学校 矢野 雄大 先生
  (3)「現代の大人とは」(映像、ウェブ課題の工夫) 東京都立井草高等学校 杉浦 光紀 先生
  (4)「古代ギリシア思想」(双方向リモートの実践) 東京都立三鷹中等教育学校 石浦 昌之 先生
  (5)「学ぶ意味の対話」(映像、双方向リモートの実践) 東京都立駒場高校 外側 淳久 先生
※発表後に質疑応答、実践交流、グループ協議(資料は当日配布)

 16:30-16:40 事務連絡等


(注)令和二年度総会ならびに研究例会はCOVD-19流行によって実施せず、総会議事は令和二年度常任幹事会にて承認しました。